夢
印あかり
「おまえは、あまり、人の役に
立てなかったから
他の役目を探しなさい」 って
最後ばかり優しい物言いだった
わたしはまだ尾が残っていて
不完全だった
ぐずを泳がしておく水は無い
恨んでなんかいないけど
少し苦しい、慣れない呼吸
でも、あの子の苦しみに比べたら
きっとこんなの
裸足で立つ岩場
煙に覆われた空
黒い油の浮いた海、痩せた松の木
こいし ふるさとってやつ?
あの子はいまどこで
何をしているんだろう
もう自分を傷つけたり
していないといい
あの子に会いたい
でも
わたしは何の役にも立てないかな
それでも会いたい
波が激しくのたうつ
濡れた裸足の跡が
岩にひたり、ひたり
それもすぐに乾いてしまう
わたしの歩みは
わたしにしかわからない
わたしが死んだら
もう誰にもわからない
それでいいと思えた