みつめている
山人

冬は終わった、と心底思う

咆哮を繰り返し、雪をやたら積もらせては、ことごとくを埋め尽くした
冬という珍奇な丸い巨大なボールの中で私たちはひたすら混練され
今となっては、そのぽっくりと開いてしまった臍の穴から
私たちは意味もわからず
オタマジャクシのように春みたいな陽気に放たれている

誰もが、この季節になると
いくつかの引き出しから言葉を選んでは
掛け流しの水のようにぶちまける
そして多くの皺数の中に、もう一本皺が追加されるのだ

祭りのあとのさびしさのように
何もかもを奪い去るような強引な冬を懐かしんでいる

冬は小さなローカル線の無人駅から旅立っていったのだ
それを見送りながら誰もが皆、幾度となく洟水をすする

いやな春が来た。


自由詩 みつめている Copyright 山人 2025-03-10 04:03:22
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