みつめている
山人
冬は終わった、と心底思う
咆哮を繰り返し、雪をやたら積もらせては、ことごとくを埋め尽くした
冬という珍奇な丸い巨大なボールの中で私たちはひたすら混練され
今となっては、そのぽっくりと開いてしまった臍の穴から
私たちは意味もわからず
オタマジャクシのように春みたいな陽気に放たれている
誰もが、この季節になると
いくつかの引き出しから言葉を選んでは
掛け流しの水のようにぶちまける
そして多くの皺数の中に、もう一本皺が追加されるのだ
祭りのあとのさびしさのように
何もかもを奪い去るような強引な冬を懐かしんでいる
冬は小さなローカル線の無人駅から旅立っていったのだ
それを見送りながら誰もが皆、幾度となく洟水をすする
いやな春が来た。