川にはまった言葉の泳法
菊西 夕座

言葉の通じない川に言葉がさらわれて

おととけななな、おととけななな、と笑う川

いますぐに言葉をはなしたまえと川に告げれば

おととけななな、おととけななな、と運ぶかーぜ

 風でないよ、風ではない、かーーーぜ

川がはなした「風」はどうやら流されている

いますぐに言葉をもどしたまえと川に告げれば

おととけななな、おととけななな、と生きるびび

 日々ではないぞ、日々ではない、びびびびびびび

川がもどした言葉はどうにも滞留している

いますぐに言葉をかえしたまえと川に告げれば

おととけななな、おととけななな、と忘れたそぶり

泳ぎに不慣れな言葉は川にもてあそばれて

おととけななな、おととけななな、と歌う日暮れ

はなしているのか、ながしているのか、川のみぞ知る

いまはもう、夕陽さえもがおととけななな、おととけななな、と沈みこむ

やがて生まれた河童が川から上がって威張るには

進化した言葉が「川葉」で陸にあがれば「河童」だと

おととけななな、おととけななな、と「進化」が笑う

河童は「大河」へ向かうけど、「退化」へすでに転じてる

おととけななな、おととけななな、転流こそが言葉の肥料

流されながら、つかまりながら、カワる世界を超えていく


自由詩 川にはまった言葉の泳法 Copyright 菊西 夕座 2025-03-08 09:29:05
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