情熱と魂をもて
栗栖真理亜
自信過剰な彼女は腰に手を当て大威張り
まるで地べたに這うちっぽけな蟻を
鼻先であざ笑うかのように見下している
暗い倉庫に立ち並ぶマネキンを指差し
これこそが天下だと豪語しながら・・・
マネキンは揃ってリアリズムを唱え胸を張る彼女と共に
ヒトの心に宿る感情すら踏み潰さんとする
幾歳も積み重ねられ埃すら被った知識を振りかざし
「ワタシには何もかもお見通し」だと
横目で物事を見遣りながら
これこそ知識人の浅はかさよ
どんな〝おりこうさん〟でも敵いやしない
自分こそが神だと思い込んでいる輩には
自意識過剰がお似合いさ
ああ、アナタが差し出す本には
一体どんなことが書かれているというの?
結局アナタはその本の内容に沿った考え方を
なぞっているだけに過ぎない
ねえ、アナタが自慢する審理眼とやらは
本当に一点の曇りもないと証明できる?
自分のためならば
たとえ、どんな子羊だって構いやしないんだろう?
精神(こころ)というココロが否定される瞬間
人間(ヒト)はヒトでなくなることを
アナタは知っているのだろうか?
そう、それこそが言葉の死
願いや想いを込めた言葉が言霊となって
この世に現れるとき
初めてカタチとなって伝わり実現される
誰にも止められない
迸る様な熱き情熱を
アナタでさえ停められやしない
ひとつひとつの言葉は
アナタのいう理屈で消し去られるものでは決してなく
永遠に残りうるものなのだから
アナタはそれを瀕死に追い込もうとしている
〝観察者〟としての冷静さが逆に
〝詩人〟としての魂を蝕んでしまう
私は警鐘を鳴らす
決して情熱の炎を絶やしてはならぬと
ただそれだけを
自分の詩人としての魂を賭けて