幸福を殺せ
詩乃
「幸せに、なりたい!」
いっせーのーせの
異口同音
それはまるで回し車のようで、
それはまるで観覧車のようだ
汚い鼠が
必死に、それはそれは必死に 駆ける
円環道路を駆けるが一歩も進まない
届かぬ頂点を目指す
充血眼球に睨まれて
それを見た紳士は 手を叩いて嗤い
それを見た淑女は 「可愛いわね」とほくそ笑む
二人の恋人が
頂点の絶景目指して胸躍らす
恋焦がれ恋焦がれし頂点
一瞬の停滞ー刹那の幸福ー彼は幹線道路を横目に月曜日を想う
下降…まだゆくな、と頂点へ続く鉄骨を睨む
嗚呼、終わるのねー気づけば彼女に連れられ二度目の月曜日
終わらない 零時の幸福めがける回転
欲望、それは重力に抗うエネルギーで
喪失、それは重力に則るレタジーだ
喪失が呼び覚ます懐古と羨望
懐古が呼び覚ます復古的革新
羨望が呼び覚ます暴力的嫉妬
それらが呼び覚ます破壊的欲動
終わらない回転
加速する回転
暗黒の回転
輝く回転
超回転
回転
転
消耗させられるだけの鼠
一度止めて、地に足付けよ
幸福は何かー充足
充足の先にはーーーー退屈
エネルギー無き頂点、墜ちる墜ちる墜ちる
無無無無無無無無無無
せめて駆ける過程を愛せ
さもなくば殺せ 無限の円環を
殺せないと言うのなら、
檻ごと全てをぶん投げてやる