妖精にもどる
nm6
夜闇。暗さに光線、たとえばただアスファルトの隆起したひとかけらを照らしている。点は(このままだよ)とささやき、いつしか光の粉をまいて。すふすふと積もり、埃のようにけむりながら少しずつ散らばる。アスファルトの一点は(おはよう)とやがて陥没した部分へとずれてゆき、その断面が彼女と朝との境目だったことに気がつくのだった。さあ「カルヴィーノ」の発音を。きみは妖精にもどる。
事務。昼下がるグレー、プリントアウト生誕。カンバセイションが影を落として響く(おやすみ)と会議の夢をみた。何かの作業を/その中で何度も。たいていぼくらはその場所で必死だ。なぜか静止画の作業は終わったらしく、いいところ足したあたりで(このままだよ)と目が覚める。普段みない夢もこんななら寝すぎて悪くはないかなと思った。さあ「悪戯」の漢字のニュアンスを。きみは妖精にもどる。
そのうちきみは、鉄を嫌うようになる。そしていつか誰か、釘を刺す。はっきりすることには、悲しいこともうれしいこともあるよ。なんにせよ、羽が生えてくれば、全部。
さあ、
ただ(おはよう)も(おやすみ)も(このままだよ)。
さあ、
*
橙。午前5時に、たとえばただアスファルトの隆起したひとかけらが躍っている。グレーの部屋には、誰もいない。プリンターが照らされて、さて今日も生誕するための朝食をとる。やがて押し寄せるカンバセイション。ぼくらは光の粉をまく。暗い夜がくればひとりで歩いてみる。さあ「カルヴィーノ」の発音を。「カルヴィーノ」。静止画の作業がまだまだ続く。そしてきみは当たり前のように、ひとり飛びまわる妖精にもどる。