黒点
ただのみきや

雪どけ水が朝の光を跳ね返し
まなこいっぱい燃えている
つめたい景色の塊は
脳の面を滑落し
グラスの中の海のよう
甘くあいまいに渦巻いて
寄せては返す 空白の口形
黒点のカラス
おのれを覗くように水を飲む
閉じたり開いたり
印象は一本のマッチ
音 光 熱 匂い
五感のエコー
灰皿の上 くずおれる残像
砂時計のような女が歩き出す
夜のつま先にコツリと当たる
光に眩んだ死者たちの
肺からやって来る嵐は
かたちを装い奏でながら
見られるまま爛れ
おどろくまま抱かれ
気化する恋に似て


           (2025年3月2日) 








自由詩 黒点 Copyright ただのみきや 2025-03-02 11:43:08
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