グィネヴィアとエレイン
atsuchan69

静寂を沈めた海が、満月を映している

白い泡を浮かべた幾度目かの波が、
今夜も踊らない砂浜を濡らして、
ひとりの足跡が、塔のある岬までつづいた

打ち寄せる羽ばたく声と、
幼い飛沫が果てのない海へと誘う

遠い海の果ては、月の砂漠と繋がっている

沖合に一艘の小舟が浮かんでいた
純白のドレスを着た女が、ひとり櫂を漕ぐ
見るがいい、キャメロットの騎士たち
あれは幻。歌いながら櫂を漕ぐ哀しみの女

やがて沖へと飛沫をあげて走る馬、
水の上を駆ける影、王妃とランスロット。
そして小舟の女を掠うように馬の背に乗せると、
かくて幻は、憂愁を湛えた波間へ消えた





自由詩 グィネヴィアとエレイン Copyright atsuchan69 2025-03-01 00:05:38
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