メモ(プラスチック・ビーズ)
はるな
蓋をしたままにしておくというのもひとつの手ですけどね、と医者は言う。でもしめられないです、開いてしまって、それらを解決したいと思ってます。わたしは言う。この指の細い医者と、やっと会話ができるようになった気がすると思っている。医者はわずかに満足そうに、ではそうしましょうと言う、いつものようにパソコンに文字をを打ちこみつつ。
思っているよりもずっと深くに沈んでいるものを引き上げて見ようとしている。見て、どうするのかわからない。そのものを沈めておくためにしてきたことが、(ちょっとよくわからない)。いつもと同じ分量の処方箋をうけとって、いったいなにが問題なんだろうと思ったりもする。眠りにつけないことも、無意味におもえる自傷も、街にはりつく眩暈や動悸も、いったいなにが問題なんだろうと思う。でも、ぜんぜん、生きていくことができないとも思う、そうしたくない、ぜんぜん。
わたしのふるえはまた少しひどくなって、ビーズをテグスに通すことができなくなった。だからいまは少女のころから集めているビーズをいれた箱をあけたりしめたりして眺めて楽しんでいる。もっと大きい、木でできたビーズや穴の大きいプラスチックビーズを通すことはできる。できるけど、あんまりしたくない。