葬列/下位次元展開
あまね
無限遠に目を細めれば
縮尺の都合上
ちいさな羽虫の亡骸も
ぼくのこの身体も
だいたい同じくらいの大きさです
土に還るための段階は
どうにも煩わしいから
いくつか端折ってみる
飛ばない虫を真似てみる
だんだん水分が抜けていって
何も感じなくなるんだろう
目を閉じると浮かんでくる
全てのものがほんとうだったらいいのに
自分を嘘つきと呼ぶのはちょっとした快楽だ
涼しげな風
弱まった太陽
死んでいく
みんな死んでいく
声を出さずに
おとなしく列にならぶ
葬列にところどころあいた余白
白夜の海をさびしく進む船みたいだ
一つところの記憶には残らないだろう
無人のまま漂流する船は
ときどきちいさな魚につつかれて
少しずつ浸水していく
無限遠に広がるこの世界を切りひらけば
彩雲の映える空のあたりと
ぼくの足元に転がる小さな死骸とが
繋がったりしないかなあ
それはただの白昼夢だから
すべてなかったことにしてしまいたいよ
なきがらの数をかぞえる
そのなかにぼくがいくつか含まれている
ひとつずつ埋めていく
鉱物質のかなしみはかなしみのままで
永遠なんてものがあるとしたら
きっと永遠にそのままで
ひとつずつ並んでいる