こんなにも素敵なことが溢れている日々を
阿ト理恵



身の回りでは、なんて素敵なことなんだろう!的なことがリアルに起きていたりするので、ほんのひとかけらですが、お裾分けしちゃいます。

1、鳥さんのプレゼントの巻

ばあちゃんが、にこにこしながら云った。
庭にそびえる大きな樹を指差して
「鳥さんの落とし物なのよ」と。

わたしは一瞬きょとんとしてしまったら、
ばあちゃんは続けた。
「植えた覚えがないのよね、だから間違いなく鳥さんが落としてくれた種から芽が出て、こんな大きな樹になったのよ」

2、うんちくんバイバイの巻

じいちゃんが、手をふる。
紙パンツについた便に。
そして「うんちくんバイバイ」と笑っていた。

わたしも、一緒に「うんちくんバイバイ、うんちくんバイバイ」と手をふって、うんちまみれの紙パンツを新聞紙に包んだ。

3、いそいそと化粧をするの巻

ばあちゃんは、ハンサムな訪問医が真っ赤なポルシェでくるのも待ちわびている。いつもはパジャマなのだが、いっちょうらに着替え、楽しそうに化粧をする。口紅は真っ赤だ。
医者が、ばあちゃんの手を握り血圧を計り終えて、ばあちゃんの眼を見つめると、ばあちゃんは、頬をポッと赤らめて、「はい!元気です。先生のおかげです」と元気に答えるばあちゃんは101歳。

4、妄想するの巻

じいちゃんは、初めて会った人に、こう云う。「この人は、佐藤さんていって、私の親友なんだ。私の恩人なんだ、だからいい人なんだ」と。毎回毎回、通りすがりの人にも指差して満面の笑みで云うのだ。

5、星が見える窓を作ったの巻

じいちゃんは、昔ロマンチックな男子で、「月がきれいだ」と女子をくどいたらしい。結婚し子供ができた時に、ついに寝っころびながら本当に月がきれいに見える窓を作って、子供に月の話しを語っちゃう父になり、じいちゃんになってからは、孫と一緒に流れ星を見つけては願い事をつぶやいといるのだ。その願い事がなんなのかを、まだ誰も知らないのだけど。


6、うさぎになって紅茶をもらうの巻

仕事に行っている家で、飲み物はいただいてはいけないことになっている。ある日、その家の息子が、「うさぎさん、紅茶はいかがですか?」とわたしに言ってきたので、「はい、では、うさぎとしていただきます」と、そのお宅にあったうさぎの耳カチューシャをして、不思議の国のアリスコップに淹れたアールグレイの紅茶をいただてしまったのだ。それから、たまに、わたしは介護士からうさぎに変身し紅茶をいただいている。ある時はムーミンコップだったり、ハリネズミだったり、パンダだったり。

7、森の中で夢みる少女の巻

その日は、突然きた。森の中、あこがれの人が焼いたクッキーを飲み込めなくて頬張っていたら、「リスみたい」とクスっと笑われた。わたしは、咄嗟にリスの回文詩を紙に書いて見せた。あこがれの人が抱きしめてくれた。



以上。
これからも、いま生きているこの瞬間に素敵なことだと感じられることを探してみようと思う今日このごろなのであります。











散文(批評随筆小説等) こんなにも素敵なことが溢れている日々を Copyright 阿ト理恵 2025-02-18 23:59:24
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