逆さま
おまる
台所の窓のそと、
蜘蛛の巣がかかっていた。
蝉の死骸がぶらさがっている。
何日か観察してたら
蝉が半分くらいになって、
ポトリと下に落ちていた。
つぎの日、それもなくなっていた。
たぶん猫に食べられたのだろう。
また何日かしたら、
蜘蛛もいなくなっていた。
たぶん鳥に食べられたと思うんだよね、
面白いよね。
まだ蜘蛛の巣だけは残っている。
家の近所の路上に、
車に轢かれた
猫の死骸があって、
女の子が頭を撫でていた。
それからしばらくして、
若い母親がやってきて、あんのじょう、
猫のことを話しはじめた。
母親はおどろいて
手を洗ってきなさい
とキツい声でつきかえす
(あの工事中のビル
13階まで建ったけど
どこまでいくのだろう......)
その日は、晴れなのか曇りなのか、
よくわからない天気で、
なぜだかわからないが、
女の子はくりかえし
死んだら地獄へいくの?
と母親にたずねていた。
したいこと
やりたいこと
食べたいことは
即、叶えたほうがいい
朝、窓を覗くと雨が降っていた。
工事現場の近くで、
トラックにはねられて
こどもが死んでしまった。
まだ二十半ばくらいの母親が、
ア゙ア゙ア゙と叫び声をあげていた。
ずぶぬれの屍体が車で運ばれると、
むらがっていた人々もいなくなった。
おもろいよね