祝祭の扉
ただのみきや

早贄みたいに残された
だれかの祈り
吹雪きの中
目くばせする
硝子のような時を隔てて

木の実を爪繰る
指先に
小鳥の心音

あなたの長い舌が
耳の奥まで入って来ると
つめたい滴をまとい
脳は裂果する
八月の太陽
太陽の大洪水
そこから蟻のよう
夜が流れ出し────

くり返される季節の祝祭
万象の鏡から微笑みかける
わたしの中のあなた

慕い求める
詩体は
肢体であり姿態でもある
だが残されるものはいつも
死体 美しく 顔のない
むき出しのめまい
揮発する偶像

芽吹きが肌を駆け抜けた
永遠に季節を追い越したまま
追いつくこともできず ただ
はぐらかし ほのめかすもの

わたしの墓の上を吹いてゆく風


              (2025年2月10日)










自由詩 祝祭の扉 Copyright ただのみきや 2025-02-10 09:37:22
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