雪の跡ー回転を想う
詩乃

白色の世界が いま ここに
asphalt を 微かに蔽う
残るタイヤ痕
自転車で坂を駆け下りながら見る
幾分か前に 冷徹な鉄の塊が 駆けた跡
60㎞/hで駆動する一瞬
鉄塊が迫る
轢き殺される
豪転に巻き込まれる
白い絶叫 白い血飛沫 白い残骸
それは跡 アクセルの跡 加速の跡
物体的前進 空間的前進 時間的前進 精神的前進
回転を見よ 廻転を見よ 回天 廻天 
その渦に 呑まれよ 身を委ねよ
外縁から吸い込まれるように中心へ 軸心へ
私が廻る世界が廻る万物が廻る
廻る廻る廻る廻る
停滞した世界 平坦な世界から 脱獄せよ
大気の淀んだ直方体から 逸脱せよ
だって、地球は丸いんだろ?
廻りながら廻っているではないか
銀河すら廻っているのだ
有限性からの脱却
膨らむ膨らむ 廻りながら
欲望もそうだ
膨らむ膨らむ 廻りながら
眼を廻しているのだ 資本に
能味噌を廻しているのだ 快感に
嗚呼内的自己と外的自己
どっちが私なのだろうね
思うに 互いに交わりあって廻っているのさ
ぐにゃんぐにゃんと歪《ゆが》んだ軌道を描いて廻っているのさ
私とあなただって あなたと彼だって 私と彼だって 彼と彼女だって
交わりあって廻っているのさ
ぐにゃんぐにゃんと歪《ひず》んだ軌道を描いて廻っているのさ
社会も廻る国家も廻る「世界」も廻る
でもね、仮令何千年廻り続けたとて 
綺麗な丸には ならないよ
混ざりけのない丸には ならないよ
なったとしても それは 遠く遠くはるか遠くから見たときの
どす汚い黒であるだろうね 


自由詩 雪の跡ー回転を想う Copyright 詩乃 2025-02-07 15:48:45
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