贋金
栗栖真理亜
目新しさや物珍しさに惑わされて
若者はぐんねりとねじ曲がった世界で息をする
声高々に荒げて語られるのは
コガネ色したメッキを被せた紛い物
メッキが剥がれ落ちればただの鉄屑でしかないのに
本当に価値あるものかよくよく眼を凝らして見分けることすらせず
すぐに手を出して掴み取ってしまう
そして後生大事に胸に抱いて
まるで全てを凌駕する輝きであるかの如く天に向かって捧げ持つ
(彼らの目や口や耳は全て機能を喪ってしまった)
確かなものを良しとはせずどこかあやふやで胡散臭く
都合が悪くなればすぐに消えてしまうもの
そんな煙のようなものに異常なほどの執着で
彼らはのめり込んでゆく
本来の誠実でまっすぐな幹を
せせら笑いながら一斉に切り落とし
あゝ
彼らには貫き通すべき信念も真意すらない
彼らにあるのは
まるで頭蓋骨の二つの眼孔のように開いた
暗い穴ぼこだらけの歪んだ世界
ずっしりと構えて根を下ろしていたはずの信念や真意は
どこにいったのか
にんまりと口の端を湾曲させながら
若者は虚飾で彩られた贋金の盃を土気色した神に供える