ぼくはもう言葉を書く以外に方法がない。ぼくのお腹のなかにぼくがいる、裸になっても脱ぎ足りない多重構造のぼくの薄皮、剥がれて落ちて繋がって、ある日からプチんと千切れた枝のそばのりんごなの。想いだせないことをいつまでも覚えている不思議。荒ぶれた泉水でも清めのお水いただけるかしら。今年の春に登山列車でバプテスマを受けにゆく。ぼくの体液は溶岩に溶かされて笑えるくらいの華奢な骨が顕となった。きみを覚えたこの身体、全てがまやかしだってわかる。ぼくもきみもぼくの頭のなかにいたの。死ねることを信じている。いつかまた時の魔法でふたりぼっちの輪廻になろうよ。
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ぼくは消える、消えてゆく。お清めの水で静かに微笑む。きみとぼく。泪と月の相性のよさ、きみもわかってくれるかなぁ。