NWSF怪畸ロマン 斬魔屋カンテラ!!『水と空氣と花と』③
川崎都市狼 Toshiro Kawasaki

【ⅶ】

 駆けつけたカンテラ・じろさんコンビ、緑色の液体、を見て「消されたか…」
「次、ベルゼブブが現れさうなところ、と云つたら- 二人顔を見合はせ
「區役所!」

 二人は取り急ぎ驛方面まで走り、タクシーを捕まへた。ドライヴァーは話好きで、「お二人確かカンテラさんと此井センセイ」「まあそれはいゝんだ、何か區役所で起きてないですか?」
 ドライヴァーはカーラジオを點けた。「大變です! 蠅のマスクを被つた人物に、中野區長が拉致されました!」カン・じろ「オーマイガッ! 急いでくれ運轉手さん!」

 ベルゼブブは區長に直談判するつもりで區役所まで來たのだ。別に二億圓のカネはだうでも良かつた。たゞ區民の不利益だけが望みだつた。
取りも直さず、悦美のサヴァンナRX-7と杵塚のZ250は區役所まで來てゐた。
 悦「待つてたわ!」

 のそり、と「空氣砲」のボンベを担いで、テオが云つた。「さ、行きましよ」


【ⅷ】

 三人?の後を、杵塚がヴィディオ撮影しながら付いて行く。事情を知らぬ警察官たちだつたが、明らかにカンテラ一味だつたので、敬禮して通した。區長室。蠅どもが群れをなして、ドアの近くを飛び廻つている。じ「かう云ふ事もあらうかと、軍手持つて來て良かつた」
 カ「ぢや、行きますか。今日はテオが主役だな」テ「ふゝゝ」
 わんわんと飛び交ふ蠅(放つて置くと人間型に變身する)を、カンテラの剣、じろさんの掌底が叩き落した。ドアを開ける…。ベルゼブブが剣崎を羽交ひ絞めにして、ナイフを突き付けてゐた。「む!」
「これでも喰らへ!」スコープを着けたテオが、「空氣砲」を見舞ふ。ベルゼブブは聲もなく、眉間に穴を開けられ、絶息、緑色の液体を殘して、魂は魔界に退いた。
 剣崎は余りの事に、失神した。警官たちが入つてくる…。


【ⅸ】

 杵「一應、區民の血税だから、とは念押しされましたが、五〇〇萬。その内一〇〇萬をテオちんの秘密兵器開發代金として、安保さんに納めて。殘金が今回のギャラです」
 じ「恐ろしい敵だつたが…。案外お安く見積もられたな」カ「まあいゝさ。貝原會長からも幾らか入るよ」じ「あ、さうか!」カ「その内、安保さんからお聲がかゝる」
「夢ないなあ」。悦美には現實感覺と云ふものが欠如してゐるやうだつた。「蠅いつぱい見たら食慾湧かないわね。お晝はお蕎麦でも取りますか」一同「さうしやう、さうしやう」


 訊けば、例の「ゴミ屋敷」の地下から、ボツリヌス菌の培養液が見付かつた、と云ふ。中野區の壊滅を、カンテラ一味が阻止した譯である。 

 めでたしめでたし。
 


散文(批評随筆小説等) NWSF怪畸ロマン 斬魔屋カンテラ!!『水と空氣と花と』③ Copyright 川崎都市狼 Toshiro Kawasaki 2025-02-03 17:29:59
notebook Home