竜巻
栗栖真理亜

テレビの画面上の竜巻警報
思わずギョッとする
表示したかと思えば消え
また表示されてから数秒で消える

「そういえば」
私は思い出す
職場の昼休み
ランチを食べに行った帰り
職場玄関口の前で木の葉を巻き込んで
勢いよく回る竜巻を

恐ろしくデカく
まるで主であるかのように職場前を陣取っていた
あの竜巻の中に入れば
きっと自分も木の葉のようにぐるぐる回された挙句
軽く吹き飛ばされしまうだろう
勢いが強すぎて体ごとバラバラになってしまうかもしれない

しかし私はそんな恐ろしい状況とは裏腹に
不謹慎にもあることが頭によぎってしまった
「カンザス、ノーミソ、ココロニユウキ…」
それは確か子供の頃母にて連れられて観たミュージカル
「オズの魔法使い」
愛犬トトと共に竜巻でマンチキンの国に飛ばされた少女ドロシーが
自分の故郷カンザスに帰るためにカカシやブリキの木こり
臆病なライオンを仲間にして
オズの魔法使いに会いにオズの国へと冒険する話
楽しかった子供の頃の記憶がふっと蘇る
「私もあの竜巻で不思議な国へ行けるだろうか」
なんと、まぁ、まるで幼い子どものような発想
命の危険があるかもしれないのに

自分でも呆れてしまう
竜巻は怒りを当たり散らすかのように恐ろしく回り続けているのに
「私は何を考えているのか」
恐怖を感じるからこそ人は少しでもそれを和らげようと
反対のことを考えるのかもしれない
私の頭の中でも思考の木の葉を撒き散らし
ぐるぐる竜巻が回っていた


自由詩 竜巻 Copyright 栗栖真理亜 2025-01-31 18:19:35
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