冬の窓辺
夏井椋也


冬の窓辺に立つ

枯木立の間から
キラキラ笑いながら
転がり出てくる子供達

寒そうな雲間を
名前も知らない鳥が
矢印になって渡っていく

冬の窓辺に立つ

だぶだぶの
オーバーコートに着られた
少し猫背の男の子

傍らの母親に
道の端っこを歩くと犬のウンチを踏むから
道の真ん中を歩きなさいと叱られながら
嫌々歩いている

大人になっても彼は道の端っこを歩き続けた

冬の窓辺から
窓の外の
今日の冬を眺める

冬の窓辺から
自分の内の
遠い昨日の冬を眺める

明日は

明日は窓辺からは見えない

というか
明日を眺めるために作られた窓なんて
ひとつもないはずだ




自由詩 冬の窓辺 Copyright 夏井椋也 2025-01-31 13:23:51
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