変装し続けた先に
瀧石夢真

自分の顔が嫌いだった
自分の声が嫌いだった
自分の何もかもが嫌いだった

そんな僕は変わりたかった
こんな顔も声も捨てて
クラスの人気者の君に変わりたかった

ある日僕は変装する事に決めた
クラスの人気者の彼の顔に
クラスの人気者の彼の声に
そしたら誰もが見てくれる気がして
誰もが僕の事を好きになってくれる気がして

だけど誰も見てくれなかった
誰も好きになってくれなかった

何が違ったんだろう
何がいけなかったんだろう
何も分からないまま

また僕は変装する事に決めた
テレビでよく見るアイドルの顔に
テレビでよく見るアイドルの声に
そしたら誰もが笑ってくれる気がして
誰もがスターだと褒めてくれる気がして

だけど誰も笑ってくれなかった
誰も褒めてくれなかった

それから何度も変装してみたけど
僕の周りは誰もいないし
何か変わる事は無かった



死んでから気付くんだろう
中身は変わっていない事に
自分を見失っていた事に


死んだ時に残っていたのは
テープで巻かれた歪んだ箱だった


自由詩 変装し続けた先に Copyright 瀧石夢真 2025-01-31 06:33:37
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