ほー、ほー、ほーたる来い
こっちのみーずは、あーまいよ


ローレライは必ず美しい顔をしている
優しい歌声で唄い
多くの男を捕らえるために常に魅惑的だ

今宵もまたひとり

｢歌を聴いたら耳塞げ｣
そんな長老の知恵を馬鹿にし
ローレライを探してみようとおもった若者(？)
ローレライを捕まえて見せ物にでもしようと金勘定したのか
小舟をこいで、あちこち探す

ローレライが歌っている

私はとても優しくて甘い
誰だって歓迎するわ
素人のあなたが好きなの
私の歌を聞けばあなたの夢が叶うのよ
かんたんなことなの
ねぇ、こっちにいらっしゃい

その魅惑の歌声をタイミング良く聴いた若者
噂通りの美しい顔、美しい声に魅了され
身を乗り出して
ローレライを捕まえようとした

その腕をガッシリ掴んだローレライ
(ガッシリ？)
じわじわじわじわ微笑みを絶やすことなく
男を深みに沈め始めた

あなたが私を得るためには
あなた自身を証明しなくては駄目よ

相変わらず
美しい顔で歌い続けるローレライ
男は警戒するのも忘れ
全ての素性を明かした

ローレライこそが
救いの神だと信じた

ニヤリ
耳まで裂けた口で笑ったローレライ
本性を顕し
モジャモジャと毛の生えた逞しい腕で
一気に男を水底の深みへ引っ張りこんだ

男は絶望した

もうオレは逃げられない…
こんなはずじゃなかったこんなはずじゃなかった
コンナハズデハ…


ほー、ほー、ほーたる来い
こっちのみーずはあーまいよ


ニヤリとほくそ笑んだ顔は
貧乏神の顔だった