テレパシー
川崎都市狼 Toshiro Kawasaki
〈怨めしき事はありつれ春隣 涙次〉
ラーメン いつものインスタントの奴だが
今日の晝飯には家の者が
焼いた餅を載せてくれた
何とはなしに感謝の念が湧く
遅き小春で
うつとりとヴェランダに佇む
もう悩みは振り切つた、と云へるか
なあ都市狼さん
と、心のなかにダイレクトに
かつての病友が語らふ
「人は何処から來て
何処へ行くんだらう?」
ウザいよそんなふうに問はれても
春の近さを
せいぜいが樂しんでくれよ、なあ
テレパシー? と彼女が云つた
(電話は相變はらず遠い)
まあ違ふ文脈での事なんだけれど
人は何処から來て(おつ母さんの奥處オクドからだらう)
何処へ行く(墓だよ、墳墓あるのかあんたには)
僕は生憎テレパスではないが
さう答へてみた
またいつ寒さに立ち返るかは、知らない
だうせ雪のシーズンは春先だ 関東地方では
沖繩出身の病友には
ちよつとの雪もエキゾティックだらう
そこで彼は
立派な腹を揺すつて破顔一笑するつて譯だ
#詩