王≒タイラント
髙任勇梓 Takatoh Yuji
何くれとなく心を働かせる為には
ペットボトル一本の水では足らず
色々とカネがかゝつてしまふ-
經濟と健康の不均衡が
僕の悩みだ
(藥の事はさて置くとする)
日の光が僕の部屋に
充滿するとき
澤山ぶら提げてゐるワードローブが日に焼けぬやう
それを遮る
莫迦げた話だが
見てくれのせゐで
暖かさを阻害するのだ
本当に詰まらぬ見榮つぱり
親父が着ていた白いスーツは
彼の墓に収まつたのだらうか
墓まで連れてゆく服などは
僕にはないけれど
死して、せめてもの供養にと
彼らの生活の基盤を
古代の王の如く 棺に詰め込むのは
健康な
民の禱りである
何処に着てゆく?
きみに會ふとき
僕は精一杯お洒落をしてゐるけれど
そのまさしく精一杯な
それ以上はない
僕の今の
在り處アリドを感じてくれたら
さう云ふ願ひがこもつてゐる
本心ではね
ラモーンズみたいに
革ジャン・ポップなTシャツ・破れたデニム・汚れたデッキシューズで
盛装としたいんだよ
色々迷ひがある-
断ち切らなければ
と云ふ現在が
クリーニングに出した
春物のコートにはあるんだ
僕の民草は
きみ一人
王の振りした
タイラント
が
玉坐に坐す
大きな圓形を描くピアス
ほんの安物だけれど
僕の装ひの「哲」が
そこに集約されてゐる
次から次へと 部屋の奥地から
發見されるガラクタめいた古着たち
それらに埋もれて
僕の幸福は
ありもしない現實の様相を
帯びる
#詩