Strawberry Switchblade
川崎都市狼 Toshiro Kawasaki
快樂が快樂ケラクであるとき
飛びだせナイフよ
Switchbladeつて
飛び出しナイフの事ぢやなかつたか知ら
さう思ひ出し
若かりし僕の足は止まつた
都會つ子ぶつて
入つた輸入盤屋
そして冒頭の句を得(これは噓、僕はまだ
武田泰淳の『快樂ケラク』を讀んでゐない)、また
苺柄のパンティに
刃物を当てゝゐる
自分を妄想したり- 盤レコードを買つた
それは双子の姉妹のやうな
美しい女が二人、矢鱈フリルの多い服を纏ひ
隈取りめく、人形めくメイクで
女の子らしい夢幻を歌ふ
巧緻なエレポップだつた
正直もつと毒々しいものが慾しかつた僕には
肩透かしだつたが
それは一つの小宇宙で
これはこれでいゝのだ、と
確信出來たのだつた
僕が美醜を見定める
詩の道に立ち惑ふその以前の
お話である
#詩