Strawberry Switchblade
川崎都市狼 Toshiro Kawasaki

快樂が快樂ケラクであるとき
飛びだせナイフよ

Switchbladeつて
飛び出しナイフの事ぢやなかつたか知ら
さう思ひ出し
若かりし僕の足は止まつた
都會つ子ぶつて
入つた輸入盤屋
そして冒頭の句を得(これは噓、僕はまだ
武田泰淳の『快樂ケラク』を讀んでゐない)、また
苺柄のパンティに
刃物を当てゝゐる
自分を妄想したり- 盤レコードを買つた

それは双子の姉妹のやうな
美しい女が二人、矢鱈フリルの多い服を纏ひ
隈取りめく、人形めくメイクで
女の子らしい夢幻を歌ふ
巧緻なエレポップだつた
正直もつと毒々しいものが慾しかつた僕には
肩透かしだつたが

それは一つの小宇宙で
これはこれでいゝのだ、と
確信出來たのだつた

僕が美醜を見定める
詩の道に立ち惑ふその以前の
お話である

#詩


自由詩 Strawberry Switchblade Copyright 川崎都市狼 Toshiro Kawasaki 2025-01-26 12:24:08
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