いきれ
木屋 亞万

手の甲が干からびてゆく
風呂上がりのカウントダウン
湯気は甘くはかない

海で生きていた頃は
まばたきさえ要らなかった
青い背は空を真似て

夕焼けに照らされる蜜柑
旬がいつだったかなんて
もうどうでもよくなった

薄く積み重ねて秒ごとに分ごとに日ごとに
年輪や地層みたいで離れて見る分には綺麗かもな
腐った穴だらけの日々も覆い隠され所在不明さ

手書きの言葉をバラバラにして袋に詰める
登場人物も出来事もない一日を紙に封じて
ごわつくゴミ袋にもたれて眠る

朝にはまだ眠っていたいと思う
腹は減ってなかったのに食後には足りない
死にたいと思うのに後悔は手放せない

燃やしてしまえばいい血も息も燃料にして
最後に全力で走ったのはいつだ
出せる限りの声で歌ったのは
本当に言いたいことを言えたのは

自分を縛る縄を切る
わけにもいかず
ならせめてちょっと緩めて羽を伸ばそう


自由詩 いきれ Copyright 木屋 亞万 2025-01-26 01:08:40
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