冬の樹霊
ただのみきや
冷気を嗅いで手繰り寄せる
黒い焔 死せる舞踊者
太陽との距離を測りながら
夢を滾らせる
からだは形を逃れ
こころは殻を得た
重なり溶け合う
不可分の同一
全感覚でまぐわうように
世界を抱きしめる
否応なく感応する
全体であり一部
血のように坦々と
めぐりめぐらせる
だから春になれば
春はおのずとあふれ出す
黒い焔は死者の面持ち
生を練る術をその身に宿す
いまはあえかな
薄紅や若葉の夢をゆらし
────前世の疼きか
芯は常夜 かたく閉じたまま
ささやく水脈かすかに浸みて
(2025年1月25日)