傳道の書に捧げる薔薇
川崎都市狼 Toshiro Kawasaki

一平に
灯の入るころや
さゝめ雪 渡邊白泉

きみの風邪が伝染る處に
僕は寢る
人戀しいからではなく
確かめたいのだ
傳達能力を 僕たちの
情慾を

コンビニのをばさん(と云つても僕より齡下だらう)
に、今朝
「行つてらつしやい」と聲がけられた
何故か嬉しかつたけれども
僕が何処へ行くと云ふのだ

白泉の(冒頭の)句は
彼が所謂新興俳句を棄てた
のではなく
一平、なる一杯呑み屋の名をさらりと
詠み込んでしまふ
彼本來の、良い意味での
イージーさを保つてゐる

そこに眼目がある
さゝめ雪など 偶然に過ぎぬ
白泉は
偶然の人、ではない

僕の詩の傳道
を さらりと
躱すきみは

さらりと云ふだらう
私、風邪、伝染したくないわ

〈黑薔薇や冬感じたりトラバサミ 涙次〉

ボタニカルのをぢさんは
猫虐めが好きなのか
こゝに貴方の、丹精の
犠牲者がゐる

我が家のスージーちやんには
前脚がない
叛トラバサミの怨嗟が
この家(ご近所さんだ)で上がる
知つてか、知らずか
知らないのなら

教へてやるよ

だが
だうやつて?
傳へる
と云ふ

詩人の一つの職掌に
疑問符を添付せざるを得ない
僕がゐる

僕の「傳道の書」、は(苦笑)

#詩


自由詩 傳道の書に捧げる薔薇 Copyright 川崎都市狼 Toshiro Kawasaki 2025-01-22 12:47:57
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