暇を持て余す
栗栖真理亜

今度はどんなうたをうたおうか
三時を少し回ったばかりの鴨川のベンチで川の香りをかすかに嗅ぎながら
風に揺らされたまま少し汗ばむ額に張り付く前髪かき揚げ
ごぉーごぉーと唸る白い水飛沫をみながら

向こう岸へ目を転じると誰もが遊べるような拓けたスペースで
ゲートボールに興じる三人の年老いた男性
あちこち行ったり来たりしながら腰を屈ませ腕を振るう

そのちょうど前辺りの小道では黒っぽい帽子をかぶって
鼠色のTシャツを着た中年の男性と
緑色のリュックを背負い前屈みで銀色の自転車を漕ぐ青年が
ちょうどクロスするように擦れ違う

少し離れたベンチには白い帽子とTシャツを着た丸い体型の男性が
川岸の正面へ体を向けたまま眠り込んだように顔を下に俯かせて座っている

そこから斜め後ろぐらいの草むらでは
茶髪で長い髪の若い女性が水色の自転車を停めたそばに座り込んで
なにやら一生懸命ノートらしき紙に書き込みをしている

誰もお互いを顧みることもなく関心すらない
それでも草の香りを纏わせながら川は流れていく
かすかに揺れる緑と白い花と水飛沫と水面と
ゆっくりとしたペースに合わせながら
行き過ぎる人の影は流れる


自由詩 暇を持て余す Copyright 栗栖真理亜 2025-01-21 13:53:41
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