医療大国ニッポン
鏡文志
おにいちゃんへ
歳をとるとは、どう言うことか? 人に求められることがなくなっていく。
コミュニケーションにおける条件反射能力も、なくなっていく。
仙人のような人や、若い頃に人望を築けた人ならいいけれど、そうでない人は他人に期待されることも無くなっていくものです。知的な内容を広めようとしても、あいも変わらずテレビのバラエティ番組でのおふざけ程度を理解出来るのが関の山の大人が増えたこの国で、幼児的振る舞いによる人気取りに明け暮れるのが馬鹿馬鹿しくて出来ない大人は、時代に愛想をつきつかれ離れて行かれるものです。
葬式に人気(ひとけ)が、あまりないことは理解しています。私など死んでももっといないくらいでしょう。学校に行かず、周囲と打ち解けることが出来なかった貴方と私。両親周囲からもいつしか、同一視されるようになりました。しかし人間の内容はまるで真逆の内容だった。貴方は親依存を求めた。私は逃避を求めたが救い船がないために、家から出ることを諦めた。私はお転婆で、貴方は優等生タイプだ。それなのに私が謙虚で貴方は自分を天才だといつまでも驕り高ぶっていた。人の言うことをよく聞く故に簡単に従わない私と、人の話をしっかり聞かない故に、自分が得をする時だけ常に従い続ける貴方。その損を選んで得を許否出来ない従順さが同じ内容の人々に愛されたと思うのですが、何故親から離れることを嫌がったのでしょうか? 最後まで自分が被害者で天才であり、周りが酷いと言う態度を崩さなかった貴方ですが、貴方に吐口として選ばれ、怒りや苛立ち陰湿な暴力や嫌がらせに至るまで受け続けた私は、貴方にとって虫けらですか? その非人情が最後には誰からも総スカンを食らった理由だとなぜ自分で気づけないまま死んでいった? それは貴方が救いがない故に、救い船などとうになく、死ぬべきタイミングを逃して医療に延命を余儀なくされた子供の時からのゾンビだったからに他ありませぬ。
おにいちゃんが不登校を決めたこととか、病院福祉に依存を決めたこととか、医薬品を大量に飲んで自殺しようとした経緯については、なんとなく理解しています。多分、依存しようとしたのではなく、好きな音楽で自立自活するぐらいのことは、なんとなく考えていたのかなあ。なら、才能がなくとも音楽の基本ぐらいは抑えようと謙虚に構える姿勢があった方が良かった。おにいちゃんは、なんでも自己流でやろうとしたね? 料理もそうだった。美味しかったこともあったけど、心身のストレスから来る歪みが内容に現れていた時期があったね。僕はおにいちゃんが長い間、怖くて気持ち悪くて。
シュタイナーや芸術哲学の本を読んで、一所懸命理解しようとしたね。ああ言うのは心の高ぶりや、思い込みだけで読んではいけない。つまりセミナーに通って色々な人と意見を交わし、理解を深めるとか、そう言うことが出来ない頑なな人でしたから。
これほど貴方を頑なにしたのは、自分は天才だと言う哀れな思い込みと、周りの環境が大きかったのでしょう。死ぬ前に貴方はもう助からないだろうと予期し、予知してこの文を2025年の一月に、もう認めています。精神病院や福祉の世界は沼だからね。一度発狂して入院した人間を正気に返して、外へ出すような良心的なことを病院に期待しても仕方がない。おにいちゃんは大事なビジネス相手として、マスコミにも漏れない、誰にも外に知られぬまま闇の中、病気が全て悪かったことにされて医薬品実験のテストの役目の最中に、遺体になって帰って来るでしょう。
最後に龍太郎お兄さんと僕との人生のハイライト。この歌を二人で聴いて感心したことが、貴方との一番良かった思い出でした。これに日本語詩をつけたので、お墓の中で聴いてください。ビーチボーイズの『Til I DIE』と言う歌。死ぬまで苦しい地獄が続くと言う歌です。
「勝手に殺すな」
と貴方が生きていたら病院の中で言ったでしょう。もう、その元気もない。医療国家ニッポンにおける貴方と私の最後のお別れです。タイトル『医療国家ニッポン』
医療国家ニッポン(Til I DIE/The Beach Boys)
僕はここにいるよ 病院の中息をして
ただ、生きている ただ、生きている
ああ、いつまで へへい へい
秋も冬の中も 病院はただ寒うて、そう
待っているばかり 待っているばかり
イッちまいそう へへい へい
国の下に生きて 消えそうなブルースで
このお国は、どう? このお国は、どう?
続く そう 続く 続く
持ってないかい? 持っていないかい?
いつまでも絶えない、愛
いつまでも絶えない、愛
いつまでも絶えない、愛
いつまでも絶えない、愛
ご静聴頂き、ありがとうございました。