私が詩ｳﾀふのは所詮平和の詩ｳﾀだ
だが數知れぬ男根が齧り取られてゐる
それを平和の御世だと云ふなれば、の話

マッチング・アプリの戀
もはや女の實體を相手に
戀の手管を試す騎士道は
廢れてしまつたかのやうだ

源氏の時代に還つた、と人は云ふ
歌を聞かせて戀をものにするのだと
だがそれに先立つ万葉の世代に
男女が何をしたのか
忘れてしまつたのではないか

妻訪ﾄﾞひ
齒母神つひに裸身となる
マスコミュニケーションが侵食してゐる
われらの生・政・性

ロバート・ブライの同題の詩は
ヴェトナム戦争の泥沼で
ぱつくり口を開けた齒母神が
挫折したアメリカの男根を
次々喰ひちぎつてゆく、その様を
描いてゐた

平和の御世をぢはりぢはりと
何かゞ脅かしてゐる

それは夜明けの神經症
私は藥と共に目醒め
今日一日の摩耗に
備へる

お笑ひ藝人が隠蔽してゐる
サブリミナルなメッセージ
全く、笑ひが平和の証しだなんて
誰が云ふ恥の上塗りなのだ

そして男らは恥に染まる
Webの苦情に對應するのが彼らの仕事
私は元々は
ちつとも預言者的な詩人なんかではなく
惰眠を貪るボヘミアンだつたのだが
この恐怖がひたと迫る世界よ
黙つてはをれぬ

恐怖を作るのが詩人か？
エズラ・パウンドを思ひ起こす
彼は現實を摑み損ねた
哀れな一藝術家だつたのだ

カリフォルニアのスーパーマーケット
一時代が終はり
そして日本
神秘のヴェール

嗚呼、日本
國と共に衰へるのが
理想的な國民

もうパチンコ屋(スロット屋と云ふのか)でも軍艦マーチは聞かない
兎に角隠されてゐるものを
探り出す
それが出來る閑暇を持つてゐるのは

詩人ぐらゐだ
こゝは職務に忠實にならう、と一念發起
何をゑぐる？
TVから逃げてきた
この私が、だ

涅槃で待つ男…

夢が現實となる
ナイトメアズ・カム・トゥルー
齒母神つひに裸身となる

＃詩

日本web詩人会、初出