人間の撰択
川崎都市狼 Toshiro Kawasaki

生まれてきた者らの國と
生まれてこなかった者らの國
お前はどちらに
棲みたいのだ?

なべてこの世は撰択肢だらけ

自分で決めろ
と云ふ事だ、要するに

僕は自室に詰まつた
澤山の本の中から
故・谷川俊太郎氏の
『アルファベット26講』(中公文庫)を
撰び取る

所謂「國民的詩人」に
かやうなウィット溢れる人を持つた
我が國の詩的狀況は
あながち嘆かはしいばかり
ではないぞ

との意を強める

僕が拔き出した本だ
撰択肢の件
何もむべに否定的見解だらけの目で
見るべきではないな

だが、(冒頭に戻る)
本当はお前
生まれてこなかつた者らの國
に、憧れがあるんぢやないのか?

いつも
生きて生きて生きまくる
と云ひ放つ
お前は却つて
怪しいんだよ
自問

自答はまだ、ない

それが今後の課題である
撰択なのだ

ずうつと探してゐる
答へではある
そんな馴染みは
必要ないのに

谷川さんの目も
生きてゐた時ほどの精彩はないが
だうも是非に手傳つて慾しいその回答を

甘えんな!
甘えていゝ人いけない人
つてものがあるだらう

お仕舞ひ。

#詩


自由詩 人間の撰択 Copyright 川崎都市狼 Toshiro Kawasaki 2025-01-17 11:47:37
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