S.T.氏の「學」
川崎都市狼 Toshiro Kawasaki

大學で妙てけれんな詩學とやらを
學ばなかつたS.T.氏は
言葉と戯れる術を知つてゐた
哲學者の父の存在が
邪魔にならなかつたのは一つの畸蹟であらうが
そもそも父君の哲學と云ふものが
邪魔になるやうな質タチではなかつたのだ
その點は父君に感謝してゐたらう

かつぱかつぱらつた
と、氏は詩した
或ひはチャーリーの男の美學
『ぺ』のウィット
上福岡市立第三小學校校歌
「いちにち、いちにち、背が伸びる」
ロバート・ブライの無意識界には
グースに跨つた母像
そして二十億光年の孤獨なるまねび

(この詩に學の字が多い事
気付かれたであらうか?
反証的なんだよね
學は、樂だ)

S.T.氏は逝つた
夭折なんて語を知らぬが如く
長生きして-
生涯詩の學生であつた氏を
遅まきながら、またいつまでも
悼む

#詩


自由詩 S.T.氏の「學」 Copyright 川崎都市狼 Toshiro Kawasaki 2025-01-13 17:22:18
notebook Home