僕の口承傳説
川崎都市狼 Toshiro Kawasaki

〈減らず口「口減らしなる恐ろしい慣習の為祖母は賣られた」 平手みき〉

蟲の息
つて云ふが、あれは口で息
してる譯ぢやないんだぜ
氣門、そんな名前の空氣の通り道が
昆蟲たちの體側に付いてるんぢやなかつたか
純粋に喰ふだけの存在である口…

僕は二週間の禁煙を樂しんでゐる
樂しい筈はない
だがこゝは敢へて「樂しむ」としておく
理由は予算の関係である
予算にはいつも泣かされるが
そこで蟲の息とならずに
葬送行進曲を寢醒めのファンファーレとせずに-

僕はもう駄目だ
と思つた事ないもの

-快活さを
装ふ
装ひだけで
充分だ
心を禁煙に奪はれたら
本当に蟲になつてしまふぞ!
さう云ふ變身譚
それも口に関はる
傳説の一挿話

#詩


自由詩 僕の口承傳説 Copyright 川崎都市狼 Toshiro Kawasaki 2025-01-13 10:08:08
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