人格と世界観4
ひだかたけし

「自分と自分自身との関係、並びに自分と外の世界との関係、この二つの関係が共に分かったとき、私はその関係を真実と呼ぶ。
だから誰でもが銘々の真実をもつことができ、
しかもその真実は同じ真実なのである」(ゲーテ『散文の格言』)。

ゲーテはこういう考え方をしていた。
ひとりの人物が持ちうる真実だから、硬直した、生気のない概念系なのだ、というのではなく、
真実とは人間精神がその中で生きている海なのであり、
多種多様な波をその表面に現しうる生きた海なのである。
「理論そのものは何の役にも立たない。
理論は様々な現象の関連を教えてくれるときにのみ意味を持つ」
とゲーテは言う(『散文の格言』)。
 ゲーテは永遠の真理を表現しようとして、ただただ完璧であろうとする理論をまったく信用しない。
彼が求めるのは、個人の精神が自分の個性に従って、
それぞれ自分の立場を確立するのに必要な生きた概念である。
彼にとって真実を認識するとは、真実を生きることなのである。
そして、真実を生きるとは、個々の事物を考察するに際して、
その事物に向き合って内的な体験をもつことなのである。



散文(批評随筆小説等) 人格と世界観4 Copyright ひだかたけし 2025-01-12 20:34:58
notebook Home 戻る