*人格と世界観1
ひだかたけし

人間は観察を通して自然の外側を学び、
自然の奥に存する衝動は、
人間自身の内部で主観的な体験となって現れる。
人間の主観的な体験は、
哲学による世界考察や芸術鑑賞、芸術創造の中で、
客観的な観察と結びつく。
二つに分裂していたものが、ふたたび人間精神のなかで
ひとつの全体になる。

人間は自分の内部で開示される深い秘密が
客観世界と結びつくとき、
最高の精神的な満足を得る。
認識内容も芸術創造も、人間の内的な体験と結びついた
客観世界の観察結果にほかならない。
外界の事物や出来事についてのどんな素朴な判断においても、
人間の魂の体験と外界の観察とが
互いに密接に結び合っている。

「物と物とがぶつかる」というときの私は、
すでに内的体験を外界に移している。
私は運動する物体を見る。その物体が別の物体にぶつかる。
そうすると、この別の物体も動き出す。
こういう言葉で知覚の内容が表現されている。
そのときの私は、思考を停止していたのではない。
単なる知覚内容以上の何かがこの一連の現象の中に存在する、
と私は考えている。
この知覚体験を解明してくれる内的体験を私は求める。
私は自分で力を利用して、
衝突によって物体を動かすことができる。
私はこの体験を現象に移して、物と物がぶつかる、と言う。
―「人間は自分がどれほど擬人化して考えているか、少しも分かっていない」(ゲーテ『散文の格言』)










*ルドルフ・シュタイナー『ゲーテ主義』より


散文(批評随筆小説等) *人格と世界観1 Copyright ひだかたけし 2025-01-11 09:50:47
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