平手みき①
川崎都市狼 Toshiro Kawasaki
[平手みき① 飯食ひに]
人はたゞ遊びせんとや生まれけむ遊ばぬ心に飛翔なかりき
夭折の人力プロペラ飛行機よ材質脆き事を悲しむ
鏡見てとくと異星の客人マラウドを思ふこんなだこんな顔して
焼き餅を焼いてたまりを塗りたれば食慾魔人勝手にぞ食ふ
鉄錆が浮いたピアスを外したり緑の穴がわが耳朶にある
わが幸の中くらゐなる悦びは例へば煙草二本の未明
アナクロな勧善懲惡夢ムだつたと「夢のノオト」はのちに語れる
わたしたち吸血家族血を慾さば自ず鮪の血合ひを愛す
低空をゆくそれは多分夢なのだ起きてほんのり悔ひが愛しい
フランソワ・ヴィヨン論ずる修士氏は不徹底ピカレスクを漂白
寒月の動くとき來て夜漠々空間と謂ふは空の漆黒
院内のやゝ唐突なプレゼント細き小指のリングであつた
春物のコートのやうな目論見を冬持ちたれば明日が見える
洟垂らし帰つて來ればわれ一人が放蕩息子である家である
宝剣を研ぎ師に出せばまづ鞘の拔けぬと申し家系呪はし
飯食ひに來たのだと云ふ照れ隠し眞に受けたのか少し沈黙
#短歌