非ずとイエスの物語
鏡文志

鏡:私は鏡。今日も沢山の人達が私を写しにやってくるわ。
うんこ:おう、オイラはうんこ。トイレ鏡君、いつも有難う。人生とは、欲を持って立ち上がり、壁にぶつかりて抑えを知り、志を抱いて義を守り、悶え葛藤の中で、バランスを取ることから始まる。自分で自分の尻を拭けい。
イザベラ:私の名前はイザベラ。舞台裏鏡さん、なんだか照れるわ。今日の私の目鼻立ちはどうかしら。私はナルシス。愛されること。愛する人の腕に抱かれること。そのために生きてきたの!
おいどん:試合前鏡どん、こんばんは。ワイは、おいどんでごわす。Yが鈍なら、Xは、鋭く、狼の目がきらりと光るライオンハートで、か弱きもの達を守ります。ワイは保守。人生の使命は守ること。張って押して突っ張って、今日も働いて経済を動かし支えて人の命を守る。公を守る、世間体を守る。
木:初めまして、水鏡さん。私は、木です。保守とは自然。そのオーガニック精神。雨が降れば風が吹き、自然は良きもの怖きもの。星が瞬く夜の砂漠。今日も僕ら木は、小鳥たちが止まり羽を休め、頭の上に花さく日々を愛しんでおります。
ジョーカー:おっと、吾輩はジョーカー。ムショ鏡さん今日からよろしく。人生とは、愛でもなければ、人生とは憎しみでもなければ、人生とは、答え探しでもなければ、人生とは禅問答でもない。違う違う、違うんだよ。全部違う。非ずだ。全て非ず。心ここに非ず。荒ぶる心を沈め、葛藤の中を生きながらも、どれにも属せず、そのどれもを信じて、揺れながら動きながら響めきながら、禅問答の中で聞こえる音楽の中を生きる。禅問答ミュージックスタートゥ!
『明日なき未来(原曲:AS AND THEM/Pink Floyd)』

優 優 優 優 優 そして、秀 秀 秀 秀 秀
時には人は、愚かになる ウウ…
身 身 身 身 身 そして、心 心 心 心 心
在りまた、そして無きでもR 僕
汚れ迷い払いきれず、欲の中
幻 幻 幻 幻 そして 現 現 現 現
明日また、ここで逢いましょう ウウ…
明日 明日 明日 明日 明日 なき、未来 未来 未来 未来 未来
微睡の中揺れている、宇宙
絶望こそが希望であると気づくなら
この瞬間やるべきこと、やるだけさ
待つ 待つ 待つ 待つ 待つ そして、這う 這う 這う 這う 這う
たじろぎうめきそれでも、言う ウウ…
悪 悪 悪 悪 悪 そして、善 善 善 善 善
間違うて、罪深き人の群れ
夢に酔い それにどこか、冷めながら
愛を歌い 舞を踊り 見栄を張る……

万太郎:人はいう。美しい日本語を使い、礼儀作法を守り、古典伝統を学んでオーガニック食品や体に優しいものを食し、品よく振る舞いて、人様へ迷惑をかけず、世間一般の常識を守って生きましょうと。
人は言う。愛されセックスを沢山して、不良に振る舞い、資本主義に貢献し、よく働いて、本など決して読まず、正直に務めてでっかい声で無遠慮に喋り、自由を謳歌して、友達を沢山作り、決して主義に偏らずに生きましょうと。
人は言う。楽しく面白いギャグやジョークを沢山言って、一人でも二人でもゲラゲラ笑い、時に哲学書など読んで深淵に考え込み、保守の精神を大切にして公を守るために闘い、個人より集団のために生きるように務めて、非モテでも宮沢賢治主義に務め、アンパンマンのような勇気を持ち、バイキンマンには決して負けず、中庸守りて時に傾き、そのアンバランスの中で輝き、生きようと。
人は言う。天才として生きながら狂気を賛美し、成功者であるよう務め、弱いものは蹴落として、嘘はついても責任は取らず、ロックンロールな生き様に叛くような人生は決して送るな、と。
違う違う違う、そうじゃない、そこじゃない。アンチアンチアンチアンチもくだらない。主義主義主義でもない。では、なにか? 5W1Hか? いつどこでなにがなにを、どのようにして? 状況証拠のための質問攻めか? 一夜の快楽か? 永遠の待ちぼうけか? はたまた人生は幻か? 人々の心に残り、永遠に刻まれるメッセージか? 
曰く
「狼に幸福などない。幸福とは、羊のためのものである。しかし、狼は幸福であるし、羊は不幸である」
曰く
「偉人を追っていた孤独人は星を眺めていた。やがて地に落ちた自分に気づき自覚すると凡庸を愛するようになった。そして偉人より三丁目の山田さんに敬意を持てる世間人になった。人間降格!」
曰く
「良質なるものは筋となる道を知っている。訳ありて不平不満本人にしか分からぬ理屈などありて、脇道横道に反れ、その際周りに波紋風など吹かせることあれど、必ず要が来れば、正道にいつか戻るもの也」
際限なきアイデアと、人生訓の羅列。その愛おしき、思考による論理的美しきを守ることか? サンマの味が美味しいと言う思いを、体によってはしたなく表すのでなく、美文によって表せるのなら、文化文明の中で生きる世の人生は幸福である。疑うことは美しい。肯定することも美しい。長いトンネルを抜けた後も、トンネルの中を走りている時も、心に抱くのはいつもポッカリ、穴 穴 穴。


散文(批評随筆小説等) 非ずとイエスの物語 Copyright 鏡文志 2025-01-10 07:01:06
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