おにいちゃんへ
鏡文志

暗闇の中、心を塞ぎ、助けを求めていたおにいちゃん
欲に溺れ恋に迷い、それでも我慢し、じっと耐え堪えていたおにいちゃん
愛を求め、憎しみを深め、僕を自らの吐口として選んだおにいちゃん
夢を見て、気高きに務め、それでも尽くしきれなかったおにいちゃん
音楽に救いを見出し、星になろうとして、なれなかったおにいちゃん
ブライアンウイルソンの『Til I DIE』を聴いて、名曲だねと言っていたね
中村一義がロッキングオンのインタビューに出ているのを読んで、胸を輝かせたよね
音楽に、夢を見ていたよね
希望を、見出していたよね
うるさい! うるさい! って言うよね。
きっと言うよね。
お前になにか分かるわけないって、言うよね
僕に、嫉妬していたね
女の子が僕に笑って僕が手を振るのを、部屋の中から覗いていたね
そして貴方は、鍵をかけた
自分を律することが、どうしても出来ないんだね
なんで、なんだろう?
もう僕には逢わない方が、良いよね
もう、戻ってこないね
もうきっと、二度と逢わないね
決して、逢わないね
さよなら、おにいちゃん


自由詩 おにいちゃんへ Copyright 鏡文志 2025-01-10 06:37:18
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