ゆびさき
よるもと

夜を背景にゆびをひろげ、細かな雪の砂に触れると凍る
目をながれるたびながれぼしを疑う
天はぜんぶ見ている
(そんなの嘘
生きるということについて考えるのは無粋
アスファルトがアルトになる冬、表情もひきしまるので
くるまも滑りやすい
(回り回る円滑
だれのこともきらいなまま
だれのこともあいしたくなる
あなたの息
あなたの肌 ぬくもり
ぼんやりした輪郭がかたちどっていく、たとえ体温のねつでも
いまほど氷漬けになりかかることはないと思う
その奥で、
とくとくと血をながされる心臓はうさぎのように動物
胸に手をあてれば
静脈は冬の木立のようにはりめぐらされ
いっこのあたたかいいきものの立つとこは崖
太古からの崖、そのときには瞳をうめつくす
幾千万の虹の光る粒が
宇宙とも闇とも名付けられないでいる
その罰としてあなた孤独であるものよ
罰として孤独であるものよわたし
氷の気配
そこらじゅうに散らばる
きたないものの残骸が
はりつめた夜を縫ってうごめく
指先は凍り
どこまでも夜がつづくのだと想像させられる






自由詩 ゆびさき Copyright よるもと 2025-01-09 11:18:14
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