星月夜
201
それが 当たり前だと 思っている
神様の声が聞こえること天使が笑うこと悪魔とお話をすること人を殺すこと愛すること死のうとすること生きること
空から雨が降ってきてびっくりするのか?
お前ら
笑い声だけでおっかなびっくりしている僕を背中からどついてくるような乱暴者
背後を取れることはつまり 背後を取りたいと思ったってことで
それが 当たり前だと思っている
(天使は翼があるのですが、いつも高い所にいるわけではなくて、むしろ歩く方が得意です)
(テレビ番組のナレーションみたいに君が言う)
時計通りに動かなくなった機械を壊れていると言って蹴とばしたエンジニアどもを
人間みたいだなと言って殺す夢を見る 天使
死神はもう鎌を持たない、時代遅れだから
誰かへのプレゼントみたいにはだかんぼうにリボンを巻かれて売り飛ばされる
寝首を掻く為に
そんな街にも観覧車は回るし、メリーゴーランドは回るし、コーヒーカップは回る、スケートリンクで君が笑う、
ああ、世界は平和なんだなぁ
それが 当たり前だと 思っている
(金の入った財布に驚くような人生だったのか、それは悲惨な目に遭ったんだろうな)
(でも安心していい、ここの連中は金よりもっと酷いものを欲しがるから)
苦虫を嚙み潰した顔で 僕を捨てた男の顔で 天使は笑う
(小説家は自分の人生を売ってるんだよ)
だから何だと言う事もない、空からは雨が降るし、ロンドンの人達は傘を差さない
神様が何も話そうとしなくなったとしても
悪魔が本当のことを言いだして、天使が首を吊っても、
すきやきにしいたけしか入ってない未来が来るとしてもだ、しいたけを食えばいい
(世界の突端に立って
恋人の為に持ってきた傘を
どこの誰かも分からない落伍者に渡す
きっと虹が見えますよ、と言って、それが貧しさだから)
水玉模様の猫が長い尻尾を立てて散歩をする
「日曜日だから」
振り向いてにっこり笑った
笑顔だった
あの子にとてもよく似ていた