さだめ
fujisaki

冥王星か、その衛星
しん、と冷え切った暗闇から
発射された一発の銃弾
娘の側頭部を目掛けて、一直線に突き進む

君に似て、目じりにほくろがあったなら、
何言うの、産まれたあとにできるのよ

どう、順調? と聞かれるたびに、
脳裏によぎった
順調ではない、状態
しかし、産まれてしまえば
元気? と問われる
人は簡単には死にやしないけどいつかは死ぬ

ほくろは、歯と同じシステムだって知らなかった
産まれたときにはまだない

弾丸は発射された瞬間に、
天文学的な計算を終えている
冥王星と地球の公転周期と、
その間にある惑星と小惑星と彗星の軌道を縫って
例えば、成長して
年頃になった娘がちょうど朝ごはんを終えて
お盆をもってシンクの前に立った時に、
たまたま普段は締まっている勝手口が空いていて、
流れるように銃弾が飛び込んでくるとしたら、
その芸術的な角度も、完璧に予測されている

じゃあほくろがどこにできるか、いつ決まるんだろう
1週間前? それとも100年前?

分娩室で頭によぎったのは
実は死期について
祝福のさなか、
産院の上空、はるかかなた
冥王星か、その衛星あたりから
一発の銃弾が発射された気がした
計算式で真っ黒になった解答用紙は
全く解読できない、
(という救い)
娘の死期はいつ決まるのだろう
産まれる前? それとも産まれた瞬間?

僕が産まれた時に発射された銃弾は、
今どのあたりを飛んでいるのか
娘もいつか死ぬ
僕の前か僕の後に

破壊するばかりだった積み木を
おもむろに積みあげるようになるまで
あるいは
やがて現れるほくろが
どんな方程式でも解き明かすことができないほど丸みをおびた
かわいいかわいい頬をさらに
チャーミングにするまで
せめてそれまで


自由詩 さだめ Copyright fujisaki 2025-01-04 20:53:59
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