風の音
201

涙でぎとぎどのぜつぼうと
血でがびがびのきぼう
誰かが笑っているのをいいことに
私だけが生きている

申し訳程度に連れている神様の子供
神様がいないことにも慣れた癖に
そこから先へ行けないと思ったこともない
ふわふわした未来への憧憬

世の中には一生ケーキを焼く人がいて
わたしはつまり一生を生きることだけでもういいと
諦められ慰められ憐れまれ恵まれ与えられて
しにたいと言う事すらできずに

幸せになりたいと言ったことがない
幸せだったこともない
幸せだったかどうかを考えた時に
全然違ったなって思うだけ

この世に何かを残さなければいけないなんて
もうとっくに終わった時代の価値観で
なにひとつ残さない事
それが意味があるという結果になっていく皮肉

全ての物はもう世界にあったのに
ないとかあるとか言って
おもちゃ箱を引っくり返した様な騒ぎで
毎日がクリスマス

守るべきものなんてもう何一つない
本当にあるそのすべてと
すべてなんていうまぼろしと
あなたはやっぱり人間のままで人間の話をしたがる

後悔したらいいのかもしれない
後にも先にもこれっきりの命
もっと素晴らしいものがあったって
もっと美しくなれたって

神様から貰ったものは神様に返っていく
人間ははなから何一つ所有できない
できると思っているから間違えてしまう
ただそれだけのことを何遍も繰り返して

いつか神にもなれる
さかなにもとりにもくもにも
ほしにはなれないかもしれない
あなたのこいびとがのぞまなかったら

美しいことってなんだろうな
小鳥が死に際に吐く息の細さかな
目に見えないけど聞こえる
手のひらの中で失われていくもののこと

幸せになれると思ってた
そうした方が生きやすかったから
たとえば育てるよりも買う方が楽なのと同じ
こうやって書くよりも打つ方が早いのと同じ

意味の分からないことを話そう
殴るよりも大事な言葉を選ぼう
金を稼ぐよりもっと楽しいことをしよう
傷付けるより良いことをしよう

何の為に?
分からないけど
そうしようって風が泣くから
そうしたいって光が喚くから

明日世界は終わったりしない
君は生き続ける
絶望と希望が入れ代わり立ち代わり
モノクローム

あるがままなんて無理だな
壊れてしまったものは元に戻らない
悲しいと言ってしまったら
それで終わりなんだ

眩しい方に傾いていく影と
左回りに進んでいく時計
相変わらず神様の話をやめない私の
天使と悪魔の本

荷物が届いたら開けるだろう
きっと何かよいものが入っている筈だから
そうやって生きていくだけ
そうやって


自由詩 風の音 Copyright 201 2025-01-04 10:49:42
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