裸の王様
たもつ



王様は裸だった
煌びやかな服はみな
貧しい民に与えたので
裸で過ごすしかなかった

見かねた詐欺師が
お似合いです、と
透明な服を仕立ててくれた
優しい気持ちに感激して
皆にお披露目して歩いた
そんな自分を見て
民衆が笑ってくれるのが
何よりも嬉しかった

特に子供には人気があって
街に出ると必ず取り囲まれた
けれど
初恋の話をせがまれるのは
いつまでたっても苦手だった



自由詩 裸の王様 Copyright たもつ 2025-01-04 00:17:39
notebook Home