主要なひとへ
よるもと
目がさめて、机には書きかけの文字があった
だれを追いかけて書いていたのかわからないまま
ただ目がさめれば誰も居ないということがわかった
紙はめくれ、生ぬるい風がこれはあなたのものであると伝える
主要なだれかがいなくなった後
紡ぎだすものがうそでないと信じられるか、嘘か真か
体を起こす行為、その重みに責任を持つ行為を
転がったペン先に委ねる、向き合うことを始める
どのように
からだを動かしていたのか
白紙になにを書き出そうとしていたのか
今となってはまるで違っている、あさやかな言葉を簡単に吐けない
おおわたしの
言葉たち
そういうの全部どうでもよかった
あんなものは夢幻、たいへん表面を掬うようなものでしかなく薄っぺらく私
という器官から生成した
なんでもないもの
重さを取り払った文字があなたのすべてを奪い、あなたのすべてになる
一つに溶け込み、あなたのすべてはみんなのすべてとなり
ただの無機物、味気のないごはんのように
無視できる存在へ
日常のさまつなことへと還元される
うつくしくもない正直な芸術
すぱっと切り離しきれないわたしは未だ
わたしの言葉をねらっている
全部正直に、夢から覚めたあとの白紙は
内在せず真っ白から来るもの
だれも居ない上で重みののしかかる、生きていく責任を
この体として
負っていこうじゃないか