疾走
秋葉竹



けんめいに
両腕を横に振って
必死な走り方で
なにかを追うようにか
なにかから逃げるようにか
わからないが
苦しげに顔を歪めて
走りつづけている少年をみる

日々ほぼ同じ時間に
制服で走りつづける少年をみる

黒いマスクをして
雨の日も傘もささず
ただときを振り切るみたいに
ただときを走り抜けるみたいに
けんめいに
両腕を横に振って
走り
走り
走りつづける
少年をみる


ありがとう
名さえ知らない少年よ

あなたのその懸命に走る姿がわたしに
想い出させてくれた
あのころの
泣かないと誓っていたまっしろな気持ち
さだめに立ち向かい
なにかによじ登ろうとする
無心であることがしあわせだと
知っている名もない花のような気持ちを


走りつづけ
追いつづけ
逃げつづけ
つづけ
つづけることをつづけつづけてほしい

名さえ知らない少年の日々の疾走よ








自由詩 疾走 Copyright 秋葉竹 2025-01-01 15:30:44
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