虚無の庭で
塔野夏子

虚無の庭に
僕らは佇む
灰色の日時計のかたわらに
でもこの場所は
光源のさだかでない光が
ぼんやりと漂っているだけだから
日時計は時を示すことができない

忘れない というクリシェを
くりかえすしかなかった日々のエンドロールに
もう要らなくなった答えが降りしきり
それも今は
音のないサンドストームにかき消され

それでもこの場所を
虚無と呼んでしまうほどに
まだ驕慢な僕らは
やがてゆっくりと踊りだす
まるでそれが
せめてものあがないであるかのように

それはたぶん かすかに残る
風の 水の 炎の記憶を真似て

(ああ そうだった
 おなじものだった
 ララバイとレクイエムは)

やがて僕らの心に
何かの思いが灯ったとしても
僕らはそれを名づけぬままに
どこまで大切に育めるだろうか




自由詩 虚無の庭で Copyright 塔野夏子 2024-12-29 11:30:58
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