せめてきみの歯くらい人間であれ
菊西 夕座


歯がはえて、歯たちがきれいにそろったら
きみはもう、はたちをむかえたおとなです
居ならんで、自他がひとつに緊密し
糧をえる、顎の砦を築くのです

歯のひとつ、それがきみの立場でも
べつの歯と、連動しながら生きるのです
根のはえた、きみの居場所は固定され
それでいて、ちからは上下におよぶのです

暴風が、ふきつけるときには顎をはり
身をよせて、スクラム組んでは楯となり
自他もなく、食いしばるのが人間で
きみの歯が、ぬけおちようと気にしまい

風がやみ、晴れわたる空いちめんに
きみひとり、こらえた歌がひびいたら
きみは知る、どの歯もみんなきみとして
他のひとが、きみをうたってくれたこと








自由詩 せめてきみの歯くらい人間であれ Copyright 菊西 夕座 2024-12-21 09:24:02
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