雪女
リリー
指先に透き通って
春の朱の血潮が浮かびあがる
女は白雪の様な顔を両手で隠し
泣いていた
あれ荒んだ心のあなたは
客の少ないバーで何故か気さくに語る
笑顔の背後に宿る夜更けの街
一人の時には胸を掻きむしったり
女というものも欲望のためだと
信じるようになったのですね
私のさしのべる手も
もう 遅いでしょうか
女のなかに情欲だけではないものを
感じとってもらえるはずです
安らぎであなたを包み込み
風と霞のむこうへ漂って行けるのに
私の熱い声も時の波に飲まれて
もう遅いのでしょうか
愛していながら
一歩ずつ遠のくあなたを、
追うこともできなくて