雪女
リリー

 指先に透き通って
 春の朱の血潮が浮かびあがる
 女は白雪の様な顔を両手で隠し
 泣いていた

 あれ荒んだ心のあなたは
 客の少ないバーで何故か気さくに語る
 笑顔の背後に宿る夜更けの街
 一人の時には胸を掻きむしったり
 女というものも欲望のためだと
 信じるようになったのですね

 私のさしのべる手も
 もう 遅いでしょうか
 女のなかに情欲だけではないものを
 感じとってもらえるはずです
 安らぎであなたを包み込み
 風と霞のむこうへ漂って行けるのに

 私の熱い声も時の波に飲まれて
 もう遅いのでしょうか
 愛していながら
 一歩ずつ遠のくあなたを、
 追うこともできなくて

 


自由詩 雪女 Copyright リリー 2024-12-19 06:51:09
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