今日のこと
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僕が生まれる日、絶対に同じ世界のどこかで人が撃ち殺される

世界はそうやってつり合いを取っている
そんなたわ言で世間はまわる

時々それが骨身に堪える
もうすぐヒーローが現れて、みんなを救う、と言った父は死んだ

2000年前にも同じことを歌った人がいたよ
翼を打ち鳴らしながら天使が笑う

祈ること祈らないこと、歌うこと歌わないこと
同じ所でぐるぐると自分の尻尾を追い掛けている

真夜中、夢の話 他愛ない願い
永遠の死と生の話

心の中に誰もいないのが当たり前なんて 寒くはならないの
枯れかけた植木に聞き返す 鉢の中の窮屈

虹の代償としてのあなた 醜さと憐みと救済
たぶんその行為を愛と人は言うんだ、泣きながらね

いいな 世界は美しいところ 口癖のように繰り返す 絶望
バニラアイスみたいな幸せ 黒猫の置物みたいなお願い

いなくなってしまった
みんなどこかとおくに行ってしまった

そうさ、君の事だ、と言おうとして
君って誰だっけ、気付けば死後の深い霧の中にいる

その為に名前があったはずなのに
私にもあなたにも意味と望みがあったはずなのに

疑うなんてかっこ悪いから、さよなら、と足元に書いて
本当に二度と会えなくなる、それが当たり前だった

2cm背伸びをして飛んだつもりになる それしか出来ないから言葉にする
氷なら溶けるだろう 水なら乾くだろう 火なら消えるだろう 風なら止むだろう

たどたどしい指先でなぞる いつか死んだ人達の想い
憧れは心を蝕む 死の匂いをさせながら

願いは届かない もうすぐ叶ってしまうと悲鳴を上げて
いつもそう 2000年前から続く愛の歌が聞こえる

木なら枯れるだろう 時間なら過ぎ去るだろう 彼女なら別れるだろう ごちそうなら食べ終えるだろう
伏し目がちに説く 世界の本当のありさま

たった10数年ぽっち 何ともつり合わない心を天秤にかけて
あなたにLINEのメッセージひとつ送れないまま

それでも光は届くだろう 人は歌い続けるだろう 道は続くだろう 朝は来るだろう
あなたの声で神が囁く

僕は絶望するから
悲しんで泣きながら死にたくないって叫ぶから

多分本当のあなたのため
見えるものだけが全てじゃないって狂った時計を直し続ける

それが人生
続いていく毎日


自由詩 今日のこと Copyright 201 2024-12-19 02:16:51
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