♪とびきり甘い苺の魔法♪
鳥星

ミント色の空を燃料にした機関車は一滴の踝を遮断する
 ぬいぐるみの雲の灯りを誘うミルクで
 柔らかな木々の卵を感じる振りをして
 ナイーブな東京タワーが羽を広げる
それはすなわち、木製の炎を
 純粋な瓶の胃袋で蒸発させるということ
  目を閉じた満月の悪口と
   熱い口づけを交わしたいということ

傷つきやすい星の声

今から静寂に人の耳を与えるとしよう
 その実験結果――
  16ページ目の銃声が優しい冷蔵庫の中へしまわれる

なぜ蛙の地図そのものが地を這うのかと言えば
 察するに――銀色の髪の巣が浮浪する
  断首された飛行機の鼻腔に巻きついた
   4号線の荒い傷跡へ
  大蛇の涙腺が羽ばたいていくからだろう

人工衛星から切り取られた歯車の聴覚に寄りかかり
 赤信号の中枢神経から引きずり出されたグランドピアノ
  その幼い蝋燭の額の上に
 恥ずかしがり屋のB型かAB型の蛙化現象を乗せながら
  不協和音は決まってこう立腹するのだった
   ――光は眩しい

飛び出した円周率の数字のDNAを全て書き換えて
 逮捕されたペンギンの嘴が腹を抱えて笑うだろう
揺れる蠍の不器用な人差し指の形をした
 可愛い墓標の水銀から分裂した肺の蜜が零れ落ちるだろう
それを言い換えれば――遺伝子工学の人波の陽炎を振ってみて
 真っ青な薔薇の虫歯が出るか
 自由奔放な木漏れ陽の両足が出るか
 そのくらいの甚大な誤差でしかない

友人が居ない森の中

裁判所の傍聴席の溶ける天使の音を妊娠した水銀の注射針で
 強がる皮膚の滝を下から上へと撫で回してみれば
  激しい飛沫の感動的なレントゲン写真を
   15人分の笑顔に変形させる契機となった
「――より具体的に言えば、多少なりとも、左利きの分子を蒐集する蛆虫の抜け殻のようなものが、きっとどこかに、多分、東京湾の西岸辺りに隠れて何かを……うーん……、恐らくは、冷凍保存か標本作成の、どちらか、アレかな、あるいはサンプル管理を、実施しようとしていたのではないだろうか、と考えられると思う……あくまでも個人的な一見解だが、果たして――」

4時23分――代わる代わるLの形の疑問符を充電すると
 タイムマシーンと文字盤の数字が束になり
  悲鳴を抱えた蟻のあばら骨を貫通するかもしれない
誘蛾灯の瑞々しい神経網の煌めきを支える
 集合的無意識になった蜘蛛の巣状の夜露たち
  曖昧なリボンの紅蓮へ忘れさせたいことは
   唯一無二の音楽的な事情の集積
その通り、シャボン玉の蝶々だ
 (それも寝息を立てる北極熊の裏拳に攪拌されながら
 (壊れない令和の聖なる眼差しに恋をする――


自由詩 ♪とびきり甘い苺の魔法♪ Copyright 鳥星 2024-12-16 22:25:50
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